ノーベル文学賞『カズオ・イシグロ 文学白熱教室』発言集まとめ 小説の書き方

NHK Eテレで放送された『カズオ・イシグロ 文学白熱教室』を見ました。
とても勉強になった。

カズオ・イシグロ
長崎県出身の日系イギリス人。『日の名残』『私を離さないで』で知られるベストセラー作家。2017年にノーベル文学賞を受賞。

以下、カズオ・イシグロさんの発言。

物語について

私はあることを発見した。物語の舞台は動かせるのだと。舞台設定は物語の中で重要な部分じゃない。これに気づいた後、舞台設定を探すのが難題になった。
あまりに自由になってしまったからだ。
物語をいろいろな舞台へ、世界中のさまざまな場所、さまざまな時代へ移せるとわかってしまったからだ。
ジャンルだって変えられるだろう。

そこで私が心がけているのは、そのアイデアを簡潔に2つ3つのセンテンスの文章ににまとめること。
もしまとめられないなら、そのアイデアは今ひとつということの証拠だ。あるいは、まだ熟してない。
それでも私は思いついたアイデアを2つか3つ、長くても4つの文章でまとめようとする。
ノートに書き留めたアイデアを見返して、その短い文章だけでアイデアの発展性や湧き上がってくる感情があるかどうか確かめる。

短い文章に、私を悩ましたり、刺激したりするような世界が広がっているのかどうか確かめる。あらすじ以上のものがないとダメなのだ。これなら物語を創りあげられる、と思えるようなものじゃないと。

アイデアというものは、時代や場所が決まっているわけじゃない。抽象的で、なんとかの話である、ぐらいから始まる。

私の3冊目の本は、『完璧な執事になりたがってる男の話で、私生活やその他の事を犠牲にしてまで、完全無欠な執事になりたいと願っている』これがアイデアだ。舞台は、どこでもよくて、現代、過去、未来でもよく、SFやファンタジーでもいい。

アイデアをどこに設定するのが一番うまくいくのか。
ここか、別の場所か、どの設定なら、アイデアに命が吹き込まれて生き生きとするのか。

メタファーについて

私はよく小さなアイデアをノートに書き込み、そしてどれが力強いか見比べる。
それが、アイデアが力強いかどうか決める私なりの方法なのだ。
これは本当に何か重要なことの力強いメタファーになり得るのかどうかと。この物語はとてつもなく大きなメタファーになるのだろうかと。

私が好むメタファーは、読書が、それが比喩だと気づかないレベルのものだ。
物語に夢中になって、物語の行き先ばかりに気を取られて、その背景を冷静に分析したりしないで済むような。
そして本を閉じたときに、あるいは思い返したときに気づくかもしれない。
人生に直接関係する何かの隠喩だったから、この物語に夢中になったのだと。そのようなメタファー、隠喩が力強く威力を発揮する。

なぜ小説を書くのか?

自分が小説を書く上で重要なことは、心情を伝えることなのだと。
知的な意見を伝えたいわけでも、何かについて議論をしたいわけでもない。偶然にそうなってしまったらそれはそれでいい。

基本的に私はとてつもなく大きく、とてつもなく重要なことに対する思いを伝えたいと思っている。
自分たちの体験に対して、人間としての感情を分かち合うことは非常に重要なことなのだと思う。心情を分かち合う必要がある。

私が小説を書くときはこう言おうとしているのだ、私はこのように感じた、それを書いて君に見せている。君も同じように感じるのか。私がここで表現しようとしていることを少しは理解してくれるのか。思いが伝わるのか。私はこう感じたんだと。

私も他の作家の小説を読むとき、作品に感謝しながら読んでいる。
自分がその心情を理解できるように表現してくれてありがとうと。
私は小説のこの点を最も大切にしている。
この世界を生きていく人間として、心を分かち合うことを。

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