映画 阪急電車 片道15分の奇跡 ネタバレありの感想

たしか当時は震災直後辺りで、てんやわんやのため劇場公開を見逃していたので、レンタルしてきました。
正直、東京の人間なので、阪急電車をなぜフィーチャーさせてんの?
と、単なるゴリ押しのタイアップ映画だとなめてかかってましたが、
なんだこれは・・・すげーいい映画じゃねーか!!

原作もいいらしい。
すみません。有川浩さんの本、一冊も読んだことない。勉強不足。
以前、『ボクらの時代』というトーク番組に有川さんが出演されていて、
「ストーリーは案外スラスラ出てくる」みたいなこと言ってたのが、うらやましくて、憎くて読んでない。
器が小さくてすみません。これからブックオフ行ってくる。

それはさておき、ストーリーなんですが、
冒頭、OLの翔子(中谷美紀)が「どういうこと?」とカップルの男女を前に問いただしている。
男は、翔子に「別れてくれ」と懇願。「彼女のお腹には子どもがいるんだ」
翔子はすっと女を見る。女は謝罪。「ごめんなさい。翔子先輩」
翔子は、その男と結婚を控えていた身。後輩に寝取られ、我慢できなかった。
しかし男は、「お前は俺がいなくても大丈夫やろ。この子は俺がいないとダメなんや」
翔子は呆れる。「分かった。二人を認めます。ただし、条件がある」といい、唇に笑みを見せる。

阪急電車 片道15分の奇跡

場面は変わり、気品がある老婦人、時江(宮本信子)が孫の亜美(芦田愛菜)と出かけるために、嫁の家に訪れる。
しかし嫁とは目も合わせず、短いやりとりをするだけで、孫を連れて行く。
犬と遊べる広場へ行くと、孫が「犬飼いたいなー」と話す。
「ダメです」と時江は話す。

大学受験を控えた女子高生の悦子(有村架純)は、関西学院大学を第一志望にしている。
しかし進路相談の教師に、「それは難しい。イチかバチかやな」と言われ、少し焦っている。
そして彼女にはどうしても大学に行かないといけない理由がある。
年上の彼との約束。大学受験が終わるまで、そういうの(初エッチ)はお預けにしようと言われている。
ちょっとアホだけど、律儀で彼女を大事にしてくれいる彼氏の竜太(玉山鉄二)。
一方で、女友達には「もうやったん?」の質問の嵐。
やらないのは、本当は愛してないのでは?と不安にも思う複雑なお年頃。

女子大生ミサ(戸田恵梨香)は、幼なじみと電話をしている。
「私の彼氏、めっちゃかっこいいんだよ。それに優しいし」
「本当に大丈夫なの?」
「だ、大丈夫だよ」
ミサの顔はどこか浮かない。それは嘘をついているから。
彼氏はすごいイケメンだが、すぐにキレるDV男。
でもミサはどうしても嫌いになれない。
出会った頃の優しかった彼、みんなが羨むイケメン。
そのステータスと思い出に縛られている。
最後の賭けなのか、ミサは同棲を申し入れるが、
「うるせーんだよ。ブス!」とお菓子を投げつけられる。

冴えない感じの主婦、康江(南果歩)。
家計を切り詰めながら、生活をしている。
それでも優しい夫と素直な息子に囲まれ、彼女は一見幸せそうに見える。
だが、夕飯時に電話が鳴り、彼女の顔はこわばる。
息子の友人の母親から、四千円もするランチのお誘い。
彼女は断りたいのだが、一方的に決められ参加することを強いられる。
家族に申し訳ないと思う彼女だが、夫は付き合いだからしょうがないだろと慰められ、
息子は、PTAの人たちでしょ。行っておいでよ、と優しい。
その家族の優しさに彼女は息が詰まるほど苦しくなる。

パンクルックで軍事オタクの大学生、圭一(勝地涼)は学食で一人食事をしている。
周りから冷やかしの目にさらされ、彼は心を閉じている。
だが、窓の外の上空に軍用ヘリが飛んでいるのを見て、一人興奮する。
さらに白い目で見られ、彼はそこを出て行く。

その同じ学校に通う、権田原美帆(谷村美月)。
一応友達もいるが、田舎っぺ丸出しのダサい女子大生。
友達から「ゴンちゃん」と呼ばれている。権田原という名字にコンプレックスを持っている。
友だちの話についていけず、ぼんやりと歩いていると、道でオオバコ(草)を見つける。
彼女は思わず、それを拾ってしまう。
「なにしてるの? ゴンちゃん」友達が尋ねると、
「オオバコだよ。天ぷらにするとうまいねんで」と話すが、
「雑草やん。やめて。ほら行くよ」と手を払われる。
価値観が合わないのでシュンとなる。

8才の少女が重い足取りで下校している。
ひとり寂しい小さな背中。

それぞれ8人の紹介、問題定義を終えると、
「人はそれぞれ皆、色んなやりきれない気持ちを抱えて生きている。どうにもならない気持ちを抱えて生きている。そしてそれは誰にも言えない。誰かに言ってもしょうがないから。皆、そう思ってる。自分自信で解決するしかない」
行き交う群衆の中、翔子(中谷美紀)の語りが始まる。
「この世界には、こんなにもたくさん人がいるのに、同じ場所で同じ時間一緒に生きているのに、それは何の意味も持たない。名前も知らない人たちは、私の人生に何の影響も与えない。世界なんてそう成り立ってるんだ。そう思ってた。・・・でも」

と、阪急電車で巻き起こる奇跡の出会いやつながりを往路と復路に前半と後半が分かれて、
8人の人生が折り重なりストーリーが進む。

どのストーリーも抜かりなく面白い。
というか、観ているこちらをほんわかとさせ、妙に何かを指摘してやろうという気を起こさせない。
観客に不快を与えないように作られた優しい映画だと感じる。
それでいて、どのキャラクターも人間臭くて好きだ。
共感できるキャラ設定がうまい。

特に、時江(宮本信子)ばあちゃんの孫に対する振る舞い、言動が好きだ。
犬を飼いたいとしつこくせがむ孫に、はっきりと、
「ダメです。あなたは飽きっぽいから」と言ったり、
ミサの彼氏が突如、車内でブチ切れて、それに直面した孫が脅えて泣き止まないでいると、
「泣くのはいい。でも自分の意志で涙を止められる女になりなさい」と忠告したり、
決して子供扱いをせず、女とはどうあるべきか、常識とはどうあるべきかを教えてくれる。
だからセリフがすごくいいんだ。
ズキュンズキュンくる。
それでも時江は時江で、今の日本のモラルの低下に我慢して、お節介を焼かないように務めている。

このストーリーのキッカケは、時江のお節介から、善意のリレーが始まる。
それがいいよね。

阪急電車 片道15分の奇跡

そして嬉しいのが、パンク男の圭一、女子高生の悦子の彼氏がとっても愛ある感じで描かれている。
近年は、男を小馬鹿にしたようなキャラ設定をする本が多い中、
どこか頼りないが愛らしく、不器用だが素直で、恥ずかしがり屋でありながら筋が通ってて、笑顔が美しい男キャラたち。
そんな少年のような青年の男に、正反対の私は憧れを抱く。
一方、女性たちはいっぱい傷ついていっぱい泣くのだが、それでも強く立ち上がり、前を向く。
凛として、気骨ある、愛らしい笑顔をする私の理想の女性たちだ。

私は、『袖振り合うも他生の縁』という言葉が大好きで、
たとえば、偶然に乗り合わせたエレベータや映画の座席が隣り合わせだったりすると、
妙に緊張してしまうくせがある。
なにか前世のつながりあるのではないかと、一人ドキドキしてしまう。
たいてい、何もなく終わるのだが、時折話しかけてくる人がいるので人生って面白いんだよ。

この映画は、そういう因縁というか不思議な縁がこの世界にはあるよ。
捨てたもんじゃないよ。
一人じゃないよ。
と教えてくれる、映画です。

とにかくすごくいい。
大好きだな、この映画。

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