冷たい熱帯魚 ネタバレありの感想

twitterやレビューで評価の高い、冷たい熱帯魚を観てきました。
満席の上、かなり期待値を上げて観てしまったのがいけなかったのか、
ごめんなさい、私の評価は低いです。

なぜ評価が低くなってしまったのか。

冷たい熱帯魚のストーリーは、
小さな熱帯魚店を営む平凡な中年男・社本(吹越満)と
その若い妻の妙子(神楽坂恵)、年頃の娘・美津子(梶原ひかり)が暮らしている。
家庭内は不穏な空気が漂っている。その原因は、美津子がつくっている。
社本と妙子は再婚。先妻が死んですぐ再婚したことが許せない美津子は、両親に反抗している。
それを修復できない社本。妙子は、暴力的な美津子に怯え(?)、
社本に触れられるのも拒み、陰鬱な日々を過ごす。
そんな折り、美津子がスーパーマーケットで万引き騒ぎを起こす。
それを丸くおさめたのが、たまたま居合わせた、
この映画とこの家族をかき回す、村田(でんでん)だった。
彼は、大型熱帯魚店を経営し、羽振りもいい。
社本をビジネスパートナーに招き、美津子の面倒までみると言い出す。
調子のいいオヤジで、周りは引き込まれる。
美津子は家から逃れることになって喜び、妙子の表情も明るくなる。社本と妙子の関係も良くなる。
だが、村田の裏の顔は、法外な金額で熱帯魚を売り、邪魔をする者は虫けらのように殺す殺人鬼。
村田の妻、愛子も、おそらく洗脳されたバタードウーマンで、殺人、死体遺棄を一緒になって手を染める。
そして、社本と一緒に村田のビジネス話でやって来た金持ちの吉田という男が毒殺される。
それを目の当たりにした社本。
その場から逃れたいが、何も知らない妻と娘を村田に人質にとられているため、
彼は村田たちを手伝うようになっていく。

ここまでがおそらく第一幕になります。

まず感じたことは、前置き(状況説明)が長い。
リズムが悪く、テンポをもう少し上げた方がよかった。
つまり無駄なシーンが多かったのだろう。

たとえば、ファーストシーンの食卓。
かなり深刻な家庭不和を表現したいはずなのに、
反抗的な娘の美津子がそこにいる。もちろん重たい空気。
そして耳障りな着信音が鳴り、悪そうな彼氏と娘は出て行く。
それについて何も言わない両親。娘がいなくなり、体を求めるが、それを拒む妻。
この一連のシーンは、とってもテンポが悪い。よく言えば丁寧で説明的だ。
結局、万引きして反抗する娘を表現するのだから、やっぱりバサッとここはいらない。
万引きした原因は、自分にあると自責する妙子、という見せ方にも少し強引で、感情移入しづらい。
妙子が隠れてたばこを吸うのも古典的で効果はない。

では、どうしたらよかったのか。
娘に焦点を当てたのが、まずかったのではないか。
むしろ、夫婦の不和を見せた方がよかった。

なぜなら、美津子より妻の妙子役の神楽坂恵に、観客、特に男は魅せられたはずだ。
顔は普通だが、胸を強調し、エロい体をしている。演出もそこを強調していた。
女というより、メスという感覚の欲情を持たせる。
観客に何かあるはずだと期待値を上げる、気になる役柄だ。
そういう面も含め、観客の多くは、きっと起こるだろう彼女のラブシーン、
あるいは裸が見たいと感じたのではないか。少なくとも私はそうだった。
結局、焦点を当てた娘のくだりはたいして効果的でなかったし、
妙子は最後まであまり活きずもったいなかった。

何より、夫婦の不和に焦点を当てた方が、この先の動機づけが楽になると思う。

見せ方は、たとえばオープニングシーンで、
客の来ない熱帯魚店。
真っ昼間、娘の目を盗んで、社本のワンパターンなセックスに飽き飽きしている様子の妙子。
視線の先には、先妻の遺影。そしてふすまの隙間から睨みつける娘の美津子と目が合う。
走り去る美津子。社本を突き飛ばし、体を隠して起きる妙子。拒まれたと感じる社本。
このワンシーンでだいたい語れるはずだ。
家族のすれ違い、崩壊、みんながこの環境から逃げ出したい、という演出ができる。
おそらくオープニング2、3分程度で、家族の状況を説明できる。
そして、妙子は万引きを犯し、村田と家族は出会う。
家族は、調子のいい村田と出会ったことで、状況が打開する兆しが見える。
だから家族は、村田に近づくことになる。
という流れが、スムーズに感情移入できるのではないだろうか。

実際の映画は、15分くらい使って、説明にもたついていた。
結局、このもたつきが、
社本のキャラ、妙子のキャラ、美津子のキャラが、
見えにくくなってしまっていた。
三者三様、何をしたいのかさっぱり分からないままストーリーが進むので、感情移入できない。
観ているこちらは、どのキャラも葛藤が見えないので、何かが起きても、へーとしか言いようがない。

そんな調子で、置いてきぼりをくらいながら、
第二幕へ突入する。

第二幕は、新たな殺人。それに巻き込まれる社本。
という図式でひたすら進む。
しかし、ここでもよく分からないシーンがある。
第一幕で殺された吉田のバックグランドが意味不明。
彼は村田に乗せられ、一千万の熱帯魚を買っただが、殺された。
それを不思議に思ったチンピラの弟が仲間を引き連れて、村田のところへつめかける。
そしてなんだか一悶着あったが、チンピラは簡単に引き下がっていく。
その間、ドアの向こうで巻き起こるレズシーン。
なんだかよく分からない。
どっかの映画でこういう演出を見たことがあるが、使い方が違うのではないか。
案の定、さほど重要でもなかった。

だが、そんなことを抜きにして、
第二幕は、やはり評判が高かった、村田役のでんでんの演技と
その妻、愛子役の黒沢あすかの演技が光る。
そのせいで、ストーリーはどうでもよくなったのだろうと判断できる。
彼らの楽しい解体ショーが始まる。
それはそれでいい。基になった事件もそうだったらしいので。
だが、観ているこちらは、混乱が生まれる。
これは、ブラックコメディー映画なのか。
かといって、笑うに笑えない。(サクラのように笑ってる人もいたが・・)
どういう感情でみていいか戸惑う。
私の周りもそんな印象だった。

つまり、どうして混乱が生まれたかというと、
何でも唐突で、緊張と緩和のバランスが悪い。
それゆえ、笑いにもならない。
ユーモラスな村田に全然狂気を感じられなくなってしまい、観ているこちらは、人を殺す。解体する。変だね。くらいしか思えなくなってしまった。
だが、終始、社本だけが深刻そうでいる。
彼は解体を手伝うことも強要されないし、暴力に脅されているわけでもなく、
かといって逃げることも考えないし、解体を待ってるときもラジオを聞いてる。
そのくせ、解体現場を見るとブルブル震え、ゲロを吐く。
妻の妙子が強引に人質にされてるわけでもないし、
絶対守らなければならないような同情する娘でもない。
なんで、社本はそこから動かないんだ!
と、私の頭は疑問でグチャグチャになる。

で目頭をマッサージしながら、第三幕へ。
村田に妻を抱かれていたことを知った社本がついに狂いだす。
そしてボールペンであっさり村田を殺害し、
自分が村田のように支配しだす。
それが社本の目的、希望だったかのようなところに落とす。
という流れなのだが、
それにしても唐突すぎて呆気にとられた。
極めつけは、ラストのセリフ。
「人生は痛いんだ」

えーーー!
どういうこと??
お前は、何したかったんだよーー!

と、まあ144分という長編で、最後の方はケツが痛いのと、
やっと待ち望んだ妙子のラブシーンが中途半端で集中が切れてしまった。

そのラブシーンは、
娘が気絶している横で、社本は強引に妻を犯したいのに、
ご丁寧に上から脱がして、パンツも膝までもたもたずり下げて、
順番に責める辺りが、この映画に狂気を持たせられない原因だなと感じた。
私はそれを観ながら、こんなシーンは、めちゃくちゃにやれ!と思った。
逃げる妙子を後ろから髪を掴んで押さえつける。
スカートを捲し上げ、パンツを脱がすなんて手間をかけず、横にずらす。
観客には妙子のケツが見える。
そして痛いくらい強引にねじ込み、バックで責める。
目が覚めた娘によく見ろ!っと首根っこを掴み、狂った親父の威厳を見せる・・
までやれば、こりゃ狂気だなと思うが、
映画は、犯してる最中に娘が気づき、
娘「お前ら、何してんだよ」バシ(社本、殴る)!娘、気絶。
そして正常位で犯す、となんだか期待はずれな演出だった。

話は戻るが、なぜこんなに評判のいい映画で私が置いてきぼりを食らったのかは、
やはりファーストシーンにある。
ここでキャラを表現しきれなかったことが問題だ。
他人のレビューを見たが、でんでんの評価、神楽坂恵や黒沢あすかのエロい体、
衝撃さだけで評価が高いように感じた。
それだけなら私も同じ評価だ。

この手の男女が行う連続猟奇殺人の多くは、
バタラーとバタードウーマンの関係にあることが多い。
その関係性を知ると、なぜ村田に人は引き込まれるのか、逃げられないのかが読み取れる。
それを表現できていれば、この映画に説得力と深みが出ただろう。

題材と配役はよかったが、脚本と上映時間の長さが気になった。
100分前後で十分。
そして、この映画に狂気を感じさせなかったのは、ある意味で問題作だった。

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脚本の書き方
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