民宿雪国 書評

民宿雪国のストーリーは、丹生雄武郎(にうゆうぶろう)という画家で、
連続殺人犯の数奇な人生の謎を追求する。

評判どおり、巧みなストーリー展開にこちらは騙される。
なにより文章表現、リズムがよく、ページをめくるスピードを上げた。
寝付きの悪い私は、寝付くために読み始めた読書が、
思わず睡眠を削って読みふけってしまった。
著者の樋口毅宏氏の他作品を読んだことはないが、
筆力のある作家であると感じた。

第1章から第3章まで、
読者を楽しませるエンターテインメント的要素が含まれていた。
あれはあの実際の人物だな、あれはそうだな、と面白く読み進められた。
おそらく読者の多くが、顔をにやけながら読み進めるだろう。

だが、様子が違ってくるのは、第4章である。
私が感じたのは、ストーリーの失速である。
なぜそっちにもっていったんだ、と読み進めながら、残念に感じた。

本の帯にも、
「本書を手にした読者は読み進めていくうちに不安を抱くだろう。
『この物語はどこへ向かっていくのだろう?』と」

そして表紙の帯に、『梁石日が絶賛!』との表記に、
私はこの本を買う際、大変躊躇した。
面倒な史観に加担して書いているのではないかと感じたからだ。

たしかに在日史観に触れている。
あとがきでも、著者は、韓流ブームにはまり、在日に関心を持った。
韓国に入れ込み、韓国関連の本を読みあさり、
日本の映画界、芸能界は、日本人ではない人が多かったことや
映画、小説も題材は朝鮮人のことであったことに強いショックを受けた、
と語っている。

この手の話は、正直、本を読みあさらなくても、
2ちゃんでよく書かれていることだ。
韓流ブームを仕掛けたのも、在日の団体であることはよく知られているし、
在日の友人も韓流ブームになる前からよく言っていた。

話を戻すが、私は、この手の感情で書いた小説が嫌いだ。
面倒なのである。
歴史は個人で見るか、全体で見るか、時代の流れでみるか、切り取ってみるか、
現代の平和な視線のみでみるかで、人それぞれ思い入れが変わっていく。
著者の思い入れに合わせて小説を読むのは、
自分なりに歴史を学んだ人間には、大変面倒なのである。
歴史に無知であれば、頭の中で吸収し、無視ができるだろうが、
どうもいちいち引っかかるので面倒だ。
それが第4章で感じた失速感である。
しかし、あとがきであるように、著者はそこをメインに持っていくことが
目的あったんだと知り、残念に感じた。

残念な理由は、史観の問題だけではなく、そこに着地点を持っていったために、
主役の丹生雄武郎の魅力が、読み進めれば進めるほど、弱くなってしまったからだ。
希代の殺人者の魅力が、中途半端なのである。
なので、4章の途中でいつの間にか寝ていた。

ただし前述したが、第1章から3章まで、大変面白かった。
丹生雄武郎の魅力をもっと突き詰めれば、最大の悪者として魅力を発揮し、
最高に面白くなったと思う。

しかし、近年の単行本では久しぶりに楽しめる作品だった。

それともう一つ。
なぜ、この丹生雄武郎に魅力が感じられなくなったかと言えば、
同時にたまたま読み進めていたノンフィクション、
消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 が原因だろう。
これは衝撃に次ぐ、衝撃である。
とにかく、1人の悪人に服従するあまり、
家族が家族を殺し合う壮絶な実話にぶったまげるのである。
そして、その「天才殺人鬼 松永太」は徹底した悪人で、洗脳者である。
この世に存在するのかと思えるほどの凄さである。
彼は獄中にいながらも、自分を偽り、囚人に媚び、
法廷でも悪びれることなく、巧みな話術で、傍聴人さえ笑わせる。
反省の言葉もそぶりもない。
正直、殺人鬼というのは、その本人さえ動機が見えなくなるほど、
自らさえも洗脳して、圧倒的な狂気に徹底している。
悲しいかな、その圧倒的な理不尽が、殺人鬼の魅力なのである。
魅力という言葉も使いたくないが。。
そういったところで、丹生雄武郎が何人殺そうと、
中途半端な動機づけがあだとなり、魅力を半減させてしまったのだと思う。

この「消された一家〜」は、事実であるゆえ、読者はかなり気分が悪くなると思う。
だが、私はあえて薦める。
洗脳とは大変怖いものである。
それを知識と知っているか知っていないかで、自分の人生で大きく変わる。
特に女性には読んでほしい。
DVの恐ろしさ、監禁の末の洗脳。
犯罪を未然に防ぐというのは、そういった過去に犠牲にあった被害者から
知識として得ることが大事だと思う。
私も以前は、たびたび起こる不可解な事件に、首を傾げることが多かったが、
知識として受け止めると首を捻ることも少なくなった。

事件の裏には、着々と進められた虐待と洗脳、そして逃れるための服従がポイントになっている
と考えると、腑に落ちる事件が多いのである。
先の茨城女子大生衰弱死事件もこういったことなのだと、理解できる。

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